日日猫好日だより vol.7

2023.10.14〜10.20のできごと
うた子 2023.10.21
誰でも

バスに乗って

日曜日、突然の横揺れとともに車が壊れた。不運なことにディーラーの代車はすべて出払っていたため、車がある生活の便利さやありがたさを思い知らされる1週間となった。

交通の便がよい都会に住んでいればさほど困らなかったかもしれないが、ここは小さいといえども立派な山。通勤、買い物、そのほかさまざまな用事に、このあたりのひとびとはみな車を使う。我が家もそうで、特に今週は買い出しに行く予定だった。しかたがないので、なるべく最小限の買い物で済むように献立を見直し、足りないモノは仕事帰りに買ったり、ネットスーパーで注文したりしてなんとかしのいだ。

通勤にはバスを利用した。普段は車なので、ユニフォームのまま、ぎりぎりの時間に家を出る。荷物もスマホと鍵が入るくらいの小さなバッグで十分だが、バスとなるとそうはいかない。ユニフォーム一式を入れた大きめのバッグを持ち、それなりの服装に着替えて身支度をし、バスの時間に合わせて少し余裕を持って家を出る。道端の草花や少し色づきだした木々をながめながらバス停までの道のりを歩く。いつもの道が少し違って見える。空は広くどこまでも続いているようだし、風景には色や形だけでなく、音やにおいがあることを思い出す。バスに乗り込み、いつもの席に座る。開けられた窓から入ってくる心地よい風に目を細め、揺れに身をまかせているうちに頭も心もゆるゆるとほどけてゆく。そこには、不便さのなかでしか得られない小さな幸福があった。

車があれば、思い立ったときに、少ない手荷物で、近所でも遠くでも行きたいところへ行ける。その自由はどうしても必要なものだけれど、束の間の不自由から気づけたことや得たものもたくさんある。普段あたりまえのように使っているもの、あたりまえのようにそこにいるひと、あたりまえのように過ごしている時間が、決してあたりまえではないこと。ある日突然、目の前から消えてしまうかもしれない、貴重で大切なものだということ。ちゃんと知っているはずなのに、言葉にもしてきたはずなのに、わたしは大事なことをすぐに忘れてしまう。忘れずにいられたらいいのにと、いつも思う。

今週の献立帳(10/14〜10/20)

10月14日(土)

夕方、コテージパイを作りはじめたところで具合が悪くなってしまい、書きかけのニュースレターをそのままにして休むことに。夜はから好しの弁当を買ってきてもらった。薬を飲んで目が覚めたらおなかがぐうぐうなっていて、弁当もぺろりと完食。たいしたことなさそうでよかった。

昼:どん兵衛 かき揚げ天ぷらうどん(写真なし)

夜:から好しの弁当(写真なし)

10月15日(日)

ぐっすり寝たら元気になっていたので、朝からコテージパイを焼いて食べた。夫が最後にバーナーで焼き目をつけてくれたんだけれど、ときどき燃え上がりそうになってヒヤヒヤした。手前のほうが焦げているのはその名残。おいしく仕上げるためには、マッシュポテトのなめらかさがポイントだなと思った。次回はもう少しだけクリーミーにしてみようと思う。

日曜恒例の書店めぐりはおやすみにしてゆっくり過ごしつつ、ニュースレターを1日遅れで出す。このまま平穏に終わるかと思いきや、車が壊れて大騒動に。ショックを受けつつ、夜は今季2度目のピェンローをおなかいっぱい食べた。腹が減っては元気が出ないので!

朝:コテージパイ

昼:おにぎり(梅、おかか)

夜:ピェンロー、小松菜の胡麻和え、たくあん、雑穀ごはん

10月16日(月)

今日はバス通勤。運転しているとまわりの景色を楽しむ余裕がないけれど、バスだとぼんやりできてよい。なんて思っていたら、夫から車の引き渡しが金曜日以降になったと連絡が入り、あわててネットスーパーで必要なモノを注文する。スーパーと同じ商品を購入できて家まで運んでもらえるってほんとうにありがたいサービスだなと思う。

今読んでいる『視点という教養』がおもしろい。特に文化人類学のところがおもしろくて、何回も声に出して「おもしろっ!」と言ってしまった。コテンラジオはウクライナの回しか聞いたことがないので、これを機に最初から聞いてみようかなと思っている。

昼:ピェンロー、小松菜とツナの味噌にぎり、たくあん

夜:韓国風甘辛肉じゃが、しいたけのステーキ、小松菜の胡麻和え、雑穀ごはん、16歳はピェンローの残り

10月17日(火)

バス通勤2日目。車が戻ってきてもバスで通勤しようかなという気持ちになっている。さてどうなることか。とりあえず、バス通勤をするならリュックがほしい。

オフィスツアーで大手町のでっかい会社へ行ってきた18歳。きらきらした笑顔で何を見せてくれるかと思ったら、有楽町のドクターマーチンで買った靴紐2種だった。最近8ホールを買ったので、デフォルトじゃない紐にしたかったのだそう。黒の平紐がかっこうよかった。

オフィスツアーのお土産は、会社の方からもらったエビアンでした。

昼:韓国風甘辛肉じゃが、サニーレタス、雑穀ごはん、目玉焼き

おやつ:発酵バタークッキー

夜:よだれ鶏、かぼちゃのロースト、厚切りれんこんのきんぴら、ほかの家族は雑穀ごはん、水餃子のスープ

10月18日(水)

ホルモンが暴れているようで、朝から気分の波がすごい。こういうとき、くよくよ考え込むとか落ち込むというのはあまりなくって、クサクサしたりトゲトゲしたりすることが多い。口喧嘩をすると、相手がモノを言えなくなるくらい叩きのめしてしまうので、絶対にもめごとをおこしてはならない。低空飛行ながら、なんとか無事に1日を終える。

昼:パックごはん(コシヒカリ)、香薫、厚切りれんこんのきんぴら、かぼちゃのロースト

夜:豚ロースの味噌漬け焼き、ポテトサラダ(とうや)、サニーレタス、ひじき煮(にんじん、ごぼう、ちくわ、ひよこ豆)、ひよこ豆としめじのピリ辛ガーリック醤油炒め、豆腐とわかめの味噌汁、雑穀ごはん

10月19日(木)

ニュースレター用の手帳がほしいなぁと思っていたので、タイムラインで見かけてよさそうだった「ブラウニー手帳」の黒を購入した。縦でも横でも使えるのがいい。届くのが楽しみだ。

夕方、空があまりにも美しい色をしていたので外へ出て写真を撮る。こういうひとときが1日の疲れをじんわりと癒してくれる。

昼:豚の味噌漬け焼き、かぼちゃのローストチェダーチーズ添え、ひよこ豆としめじのピリ辛ガーリック醤油炒め、ポテトサラダ

夜:野菜たっぷりハーブ蒸し(塩、ハリッサ、粒マスタード)、ひじき煮、大根と玉ねぎの塩麹コンソメスープ、雑穀ごはん

10月20日(金)

バス通勤3日目。帰り道、海のほうから黒い雲がもくもくと近づいてきて飲み込まれそうだった。ひと雨くるかと思いきや、その後ぴかーんと晴れて拍子抜けする。ただ、風が強すぎて洗濯物ではなく物干し竿が落ちてしまった。

夕方、車を引き取るために家を出たはいいものの、閉店時間に間に合わないことに気づき、バスの中で呆然とする。どうしようもないのでスパッと気持ちを切り替え、ミスドをたくさん買って帰ることにした。転んでもただでは起きない。わたしは自分のこういうところがわりと好きだ。

帰宅すると、ひと足先に帰っていた18歳の部屋と玄関に明かりが灯っていて、じんわりとあたたかい気持ちになった。たまには「おかえり」と言われるのもいいものだ。

昼:ひよこ豆としめじのピリ辛ガーリック醤油炒め、味付け玉子、野菜たっぷりハーブ蒸し、ハリッサ

夜:ミスドいろいろ、韓国風蒸し豆腐

本棚から1冊

我が家のあちこちにある本棚から1冊を選んで紹介する「本棚から1冊」。今日紹介するのは、『ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔』です。

映画『ハウルの動く城』の原作ということでご存知の方も多いのではないでしょうか。舞台は魔法が存在するインガリーという国。ある日、3人姉妹の長女ソフィーが「荒れ地の魔女」に呪いをかけられ、老婆に変身させられるところから物語が動きだします。

引っ越しを重ねるうちにぼろぼろになってしまった帯には、たしか「スタジオジブリで映画化決定」と書いてあったはず。書店でたまたまそれを見て購入し、帰り道の電車で夢中になって読みました。

登場人物(人じゃないものも)がみんなそれぞれ魅力的で、読み終える頃には好きになっていて、すぐにまた会いたくなる。魔法が存在する世界が現実世界の近くにちゃんとあって、わたしたちと同じように暮らしているひとびとがいるんじゃないかと思えてくる。そんな魅力がたっぷりつまった作品です。

『ハウルの動く城』シリーズには、このあと『アブダラと空飛ぶ絨毯』『チャ―メインと魔法の家』の2作品が続きます。映画のその先、が気になる方はぜひ手にとってみてくださいね。

作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

訳:西村醇子

徳間書店

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本棚のなかにおさまっているナッツ

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次回の日日猫好日だよりは、10/28(土)に配信予定です。

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