日日猫好日だより vol.6
毎日ごはんを作る、ということ
最近、ごはんを作るのが楽しい。もともと料理をするのは嫌いじゃなかったけれど、ああわたしはごはんを作るのがほんとうに好きなんだなと思う。
18歳で家を出てひとり暮らしを始めたので、自炊歴ということでいえば結構長い。とはいえ、ひとり暮らしを始めた頃はまともに作れるものがほとんどなく、祖母に買ってもらったピースパンで米を炊いて、おかずは買ってきた惣菜や納豆で済ませることが多かった。
ひとり暮らしに慣れてきてからも基本は米だけを炊く毎日だったけれど、気が向けばスパイスを調合してカレーを作ったり、ミートソースを時間をかけてじっくり煮込んだりもした。自分が作りたいものや食べたいものを、好きなときに作って食べる。それはわたしにとって、とても楽しいことだった。
23歳で結婚して、2人で暮らしていた数年は気ままなもので、あちこち出かけて外食もよくしたし、凝った料理を2人で作ることもあった。とにかく自由だった。「作らなければ」という思いは一切なく、料理を苦に感じることもなかった。
がらっと変わったのはやはり子どもが生まれてからだと思う。こちらが与えたものしか口にできない人たちと暮らすようになって、はじめて料理をすることが義務のように感じられた。そして、台所に立つ時間が長くなるにつれて、楽しいという気持ちはどんどんなくなっていった。三度の食事をどうするか考えるのがとにかく苦痛だった。
そんなわたしが、今はごはんを作るのが楽しいと感じている。不思議だなぁと思う。子どもたちが成長して、少し余裕が出てきた。おそらくはそういうことなんだろう。少し増えた自分の時間を何に、どう使うのか。そこに自分の「好き」や「楽しい」が表れるとするならば、わたしにとってそれは、ごはんを作ること、編み物をすること、裁縫をすること、本を読むことだったのかもしれない。
好きなことだけ、楽しいことだけしていられればいいけれど、そういうわけにもいかない。さまざまな「〜しなければ」から完全に解放されることはないのかもしれない。でも、だからこそ、手放せるものはできるだけ置いて、身軽になっていけたらいいなと思う。
今週の献立帳(10/7〜10/13)
10月7日(土)
16歳の学校用セーターを買うために、ニュースレターの発行を延期にしてユニクロへ。ああだこうだと言い合いながら紺色の丸首セーターを買った。筋トレや体づくりに一家言ある若手の先生が入ったことによって、上半身がムキっとしてきた16歳。口を開かなければかっこよく見える。次は胸板を厚くするのが目標だそう。
ちょうどバイトが終わる時間だったので、18歳を迎えに行ってみんなでサイゼリヤへ。こちらでもああだこうだと言い合いながら楽しく食事をした。料理が運ばれてくるのを待っているとき、16歳が正面に座った18歳の顔をまじまじと見つめながら「ひさしぶりにちゃんと顔を見たけど、◯ちゃんめっちゃイケメンだねぇ」と言って、18歳が照れながらニコニコしていたのがおもしろかった。普段はふざけたことばかり言っていてうんざりすることの方が多いんだけれど、彼のこういう素直さがとても好きだ。
家族だからといってみんながみんなを好きでいられるわけではないというのを身をもってわかっているので、くだらないことで笑いあえる団らんの時間がとても貴重なものに思える。わたしが年をとり、いろんなことをすみずみまで覚えていられなくなっても、この感じだけは記憶に残っていますようにと願う。
昼:スーパーのおにぎり弁当
夜:たっぷりペコリーノチーズのパルマ風スパゲッティ、カリッとポテト
10月8日(日)
バイトが休みの18歳も一緒に日曜恒例の書店めぐりへ。通り道にいるいつもの山羊さんは、まっすぐに立って遠くを見つめていた。児童書コーナーで見つけた『雨にシュクラン』を購入し、ほかの店をみていた18歳と合流。たい焼きを買って帰宅する。
午後からのんびりとニュースレターを書き、1日遅れで出す。書くことはとても楽しいんだけれど、1週間がはやすぎる。すぐにいろんなことを忘れてしまうので、ニュースレター用の手帳を買おうかなと思っている。
夜は、「ザ・秋」という献立で大変おいしかった。かき揚げがとても苦手でいつまでたっても上手にできないんだけれど、夫のナイスなアシストによってなんとか形になった。天ぷらは揚げたてを台所で食べるのがいちばんうまい。
昼:五島うどんの地獄炊き
夜:秋鮭と舞茸の炊き込みごはん、ごぼうとあおさのかき揚げ、さつまいものかき揚げ、小海老と貝柱のかき揚げ、舞茸の天ぷら
10月9日(月・祝)
やっぱり休みは3日くらいないと休んだ気がしない。連休最終日は何をしていたか思い出せないくらい、家でのんびりと過ごした。たぶん、昼寝、編み物、読書などをしたはず。こういう過ごし方からしか充電できない何かをたっぷり満たせた1日だった。
昼:カップスター醤油味(写真なし)
夜:落とし揚げがんも、秋鮭と男爵とブロッコリーのチーズ焼き、海老のガーリック醤油、うつってないけどキムチ、雑穀ごはん
10月10日(火)
最近、ホットクックで大豆を蒸すのにはまっている。やわらかくて甘いんだけれど、適度に歯ごたえが残っているのがよい。しかも、水にさえつけておけば、あとはホットクックがやってくれて、1時間でおいしい蒸し大豆ができあがる簡単さがまたよい。
ホットクックには、めんどくさくて敬遠していた調理を、「え、そんなに簡単にできるならやってみようかな」と思わせる力がある。しかし、高い。使いこなす気概がないと、ちょっと手を出しづらい値段だよなと思う。
ちなみに、わたしはもともとJ:comのレンタルサービス(月額1600円ほど)を利用していて、半年後くらいにレンタルサービス事業終了の連絡とともに、レンタル中の機器は要らなければ返送、もしそのまま使いたければ追加の支払いは必要ないのでどうぞといわれ、ありがたく使わせてもらっている。正規の値段でも買ったか?といわれると悩んでしまうので、人にはなかなかおすすめできない。これはあくまで個人の意見だけれど、料理のすべてがおいしくできあがるわけでもないと思っているから余計に。自分がおいしいと思えるかどうかは使ってみないとわからないことだから、もし気になっている方がいたらレンタルしてみてからのほうがいいですよと言いたい。
昼:ツナのっけごはん、キムチ、ピーマンのおかか和え
夜:豚ロースの塩麹漬け、ししとう、じゃがいも(キタアカリ)のオーブン焼き、大豆とじゃこの甘辛炒め、木綿豆腐とわかめの味噌汁
10月11日(水)
大豆に引き続き、つぶあんを作った。つぶあんは水につけておく必要がないので、もっと気軽に作れる。たった2時間半で自家製つぶあんができるんだからすごい。ホットクックががんばってくれている間にガツガツと原稿を進めた。
ビフォー
アフター
暗くなるのがずいぶん早くなってきたので、小さな灯りがほしくなっている。持ち運べるランタンのようなもの。秋の夜長はよくも悪くも考えごとが増えるので、暗いほうへいきすぎないように、体はあたたかく、部屋は明るくしておきたい。
おやつ:つぶあんをかけたカステラ
昼:豚ロースの塩麹漬け、ししとう、キタアカリのオーブン焼き、ごぼうとにんじんのきんぴら
夜:塩豚のソテー、すだち、ごぼうとにんじんのきんぴら、さつまいもとメークインのオーブン焼き、チリコンカン
10月12日(木)
きのうがんばったおかげで午前中のうちに入稿できた。昼を早めに食べて、じゃがいもなどの野菜ときび砂糖を買いに出かける。野菜がどれもこれも高いが、背に腹はかえられないので元気を出してたっぷり購入した。すみずみまでおいしくいただこうと思う。
せっかく買い物に出たというのに餃子の皮を買い忘れたので、夜は「皮から作ったにらまんじゅう」という、平日にあるまじき豪華メニューになった。皮から作ることになったせいで予定していた大福づくりを断念したため、パンケーキとバニラアイスとつぶあんという非常に罪深いおやつを食べることに。ああ、なんてハイカロリー。でもおいしかった。
昼:塩豚、ししとう、チリコンカンのチーズ焼き、塩おにぎり
おやつ:パンケーキ(バニラアイス、つぶあん添え)
夜:にらまんじゅう、塩豚と野菜の豆乳味噌スープ(塩豚、玉ねぎ、キャベツ、男爵、かぶ、かぶの葉)、大豆とじゃこの甘辛炒め
10月13日(金)
仕事帰りに白玉粉を買い、家に帰ってすぐに大福を作った。つぶあんに粗く刻んだくるみを入れたら、ごりっとした食感が楽しい大福になった。生地に納得がいっていないので、近々リベンジしたい。
夜に作った韓国風蒸し豆腐があまりにもおいしかったので、こちらでもレシピを共有しておく。
普段好んで豆腐を食べない16歳が思った以上によく食べたので、木綿豆腐2丁じゃ物足りない感じだった。次は3丁で作ってみようと思う。それから、さつまいもの茶巾絞りは簡単なのに特別な感じが出てよい。栗の甘露煮を刻んで入れてもおいしい。
昼:にらまんじゅう、酢胡椒、ごぼうとにんじんのきんぴら、塩むすび
おやつ:手作り大福(くるみ入りつぶあん)
夜:ツナの炊き込みごはん、韓国風蒸し豆腐、さつまいもの茶巾しぼり、サニーレタス、ちくわとこんにゃくとわかめの味噌汁
本棚から1冊
我が家のあちこちにある本棚から1冊を選んで紹介する「本棚から1冊」。今日紹介するのは、『The Best Place in the World』です。
いきつけの書店で行われていた洋書フェアでたまたま見つけた絵本。主人公のうさぎが「世界で最高の場所」を見つけるために旅に出るという、絵本でよくあるオーソドックスなお話なんですが、旅に出るきっかけとなったフクロウの言葉がとてもいいんです。
うさぎの"Do you think our meadow is the best place in the world?"という問いに対して、フクロウは"Why don't you explore the world and find out for yourself?"と答える。友達に対して、「人に聞くんじゃなくて、世界を探検して自分自身で見つけてみたらいいんじゃない?」と言えること。そして、その言葉を受けとめて旅に出てみようと思える素直さ。どちらも尊く、まぶしい。ちょっとうらやましいなって思いました。
うさぎが見つけた答えはうさぎだけのもので、わたしやあなたのとは違うかもしれないし、違っていい。なぜなら、自分にとっての「世界で最高の場所」は自分で見つけるものだから。英語を日本語に訳しながら読んでくれた18歳と「それが生きていくってことなのかもね」という話ができたのも、この本を買ってよかったことの1つです。
作・絵:ペトラ・ホラチェク
Candlewick Press
最近読んだ本の感想はこちらから読めます。
邪悪な顔のヨルくん
次回の日日猫好日だよりは、10/21(土)に配信予定です。
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